日本人を肯定する―近代保守の死

日本人を肯定する―近代保守の死 の詳細

2018年に読んだ数十冊の本の中で最もインパクトがあった著作です。私の中で2018年のイヤーブック（？）。これまで3度は読み返したでしょうか…タイトルと装丁がいかにも小難しそうなので、敬遠する人もいるでしょうが、実にもったいない！ なぜこんな曖昧なタイトルにしてしまったのか？本来なら「近代という名の虚構とユダヤ思想 〜3人の保守はなぜ自死したのか？〜」とつけるべきでした。でも、そのタイトルだと出版社に圧力がかかったかもしれません。かつて故・渡部昇一先生の監修で、名著とされる「ユダヤ人 なぜ摩擦が生まれるのか」ヒレア・べロック（著）が3年前に完訳・出版されたとき、渡部先生がどこかのか対談で「どこの新聞社も広告を掲載してくれなかったのです。差別的なことは何も書かれていないのに…」とおっしゃっていたのが印象的でした。ユダヤ関連の情報はかなり統制されているのでしょう。田中英道さんはこの本の中で、近代に生まれた権威や権力に相対する個人、社会から抑圧された個人という概念は、元を辿ればユダヤ思想に行き着くといいます。フランス革命も、ロシア革命も、現代のグローバリズムも、すべてユダヤ人が主導した社会変革でした。とすれば、明治維新以降、日本が出会ったのは西欧の近代物質文明だけではなく、ユダヤ人が作り上げた「近代」という名のイデオロギー（政治思想）だったことになります。その虚構性を見抜けず、近代人になりきれないという劣等感を抱えながら、3人の言論人は死を選んでしまいました。そんな必要はなかったのに…というのが田中先生の主張です。その主張は、現代を生きるすべての日本人へのメッセージでもあります。西洋近代という文明に劣等感を持つ必要はない。日本人はもっと自らのありようを、生き方を、自分たちの歴史、伝統、文化を誇りなさいと。中身は濃いですが、新書版なので気軽に手に取れると思います。おすすめです。