法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する

法のデザイン—創造性とイノベーションは法によって加速する の詳細

当方、現行の著作権法は時代にそぐわず、アップデートが必要だと感じている立場ですが、大変興味深く読ませていただきました。アーキテクチャに関する考え方は、法律とは無関係の仕事をする上でも活用できるかも知れません。著作権の背景や外国の状況の理解が深まり、一人の日本国民として著作権を考える助けになります。（日本の著作権制度自体をリフォームした方がよいかも知れないという内容もあります。）また、著作権について多くの判例を知ることができ、どこまでが合法でどこからが違法かという理解が深まりました。著者は現役の弁護士で、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンの理事の一人です。内容は法律と創作の関係に関するものです。主旨は以下２点と思います。１．現代の制度設計においては、法の設計と並んで、アーキテクチャの設計が重要である。アーキテクチャとは、行動を制約し、または可能にする物理的・技術的構造のこと。例えば、ホームレスが寝られないような形状の公園のベンチなど。２．初音ミク、ウィキペディア、トヨタ自動車などはオープン・クローズ戦略をうまく活用している。オープン・クローズ戦略とは、知的財産権を戦略的にオープン化する戦略である。第一部（63ページ）でこれら２点を説明した上で、第二部（263ページ）で、この考え方を音楽、二次創作、出版、アート、写真、ゲーム、ファッション、アーカイヴ、ハードウェア、不動産、金融、家族、政治に当てはめて著者の考察が紹介されています。（それほどまでに、アーキテクチャとオープン・クローズ戦略は広い範囲に応用可能だというデモンストレーションでもあるのでしょう）内容はプロの視点で具体的ですが、素人にも分かるように書かれており、大満足の一冊でした。少なくとも私は、これほどの知識やものの見方を知らずに生きていたのかと恐ろしく感じました。また同時に、既存の法規定の上にも適切にルールをオーヴァーライドする方法を知り、可能性を感じました。多くの人がこの本を読んで著作権に関する誤った認識を正し、社会全体の創作活動が加速されていくことを望みます。